スマートフォンは圏外、水道の通っていない集落に平安時代の薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)がまつられている。
だが、薄暗いお堂の中は屋根が抜け、天井板が仏像の頭に当たっている。台座の下にはネズミの巣。地域に眠る大切な文化財ながら、国、県、市町村の指定がかかっておらず劣化の進む「未指定文化財」をどう守るか。「何とかしないと」と危機感を抱く学芸員らが調査と修復を急いでいる。
奈良県桜井市北山地区へは、空高く伸びる周囲の木で薄暗く、車1台が通るのがやっとのくねった山道をゆっくり上ってたどりつく。水源は井戸。家は数軒あるが、夜に明かりがつくことはない。
区長の小谷元一さん(75)は中学までこの地区で暮らした。今は市中心部の自宅から地区に通う。記憶には、23軒が林業や農業で食べていた時代の地区の姿がある。住人や帰ってくる人でにぎわった祭りも、神仏に何度も参っていた人も覚えている。しかしいま、地区の神社なども小谷さん1人で掃除する。
「『ああしよう、どうしよう…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル